卵巣年齢が高い人・低い人

卵巣年齢が高い人・低い人

AMH検査やF checkなどによって卵巣年齢を測定したあと、卵巣年齢が高いと不安になりますよね。

「卵巣年齢が高いということは、妊娠しづらいのかな?」とか「卵子の数が少ないということは早めに閉経してしまうの?」と考えてしまうのではないでしょうか。

また、卵巣年齢が低いということはAMHの値が高いということですが、生理不順も伴っている場合には「多嚢胞性卵巣症候群」という疾患を持つ可能性があります。

今回のコラムでは、卵巣年齢が高い人、低い人それぞれが、検査結果を踏まえてどのような点について考えるべきか、そして自身のライフプランニングにどのように活かせば良いのかを解説します。

・卵巣年齢が高いとどうなる?


まず最初に理解していただきたいことは「卵巣年齢は妊娠率を示すものではない」ということです。

卵巣年齢はあくまで「卵巣内に残っている卵子の数の目安」を示すものであり、妊娠を望める期間がどの程度あるかを示したものです。

「卵巣年齢が高い」という検査結果が出た場合に考えるべきことは「早期閉経(早期卵巣不全)」の可能性です。 つまり、卵巣内に残された卵子の数が少なく、平均的な閉経年齢(50歳頃)よりも早くに閉経を迎える可能性があるということです。

※卵巣年齢に関する解説コラムはこちら

以下では、次の3つの場合に分けて「卵巣年齢が高かったとき」にどのような点について考えるべきか説明します。

(1)現在、夫婦で妊活中の場合
(2)すでに不妊専門クリニックで検査や治療に取り組んでいる場合
(3)今すぐには妊活や不妊治療を考えていない場合

(1)現在、夫婦で妊活中の場合

まず考えるべきなのは自分たち夫婦のファミリープランです。卵巣年齢が高いということは妊娠のために残された期間が短い可能性があるからです。

例えば自分たち夫婦の年齢が33歳だとして、一人目は34歳、二人目は37才と二人の子供を出産することを計画していたとしましょう。 しかし卵巣年齢が45歳と測定された場合には、二人目を望む頃には残りの卵子数がほとんど残っていないということも考えられます。

このような場合には、先に生殖医療を活用して卵子凍結をしておいたり、そもそも本当に二人の子供の出産を目標にするかどうかというファミリープランの検討が必要になってきます。

また、妊娠のために残された期間が短いということは妊活の優先順位を上げて行動する必要があります。となると、早めに夫婦揃ってブライダルチェックや不妊基本検査を受けることで、妊娠しづらいリスクがないかどうかを確認することも必要となります。

そして、婦人科や不妊治療クリニックで妊娠しやすいタイミングを指導してもらう「タイミング法」や排卵日に精子を子宮内に注入する「人工授精」を活用するという手段もあります。

(2)すでに不妊治療クリニックで検査や治療に取り組んでいる場合


AMHの値は不妊治療の進め方を決める際の参考になります。AMHの値が低く卵巣年齢が高いと測定された場合は、残っている卵子を有効活用し、なるべく早く妊娠できるように治療計画を立てます。

例えば、将来的には二人の子供を出産したいと考えていて、現在は一人目の妊娠のために不妊治療を行う場合には、二人目のための不妊治療に備えて先に受精卵を複数個凍結保存しておくなどの対応をとります。なぜなら、一人目出産後にも卵子を必ず採卵できるとは限らないからです。

また、卵巣年齢は採卵などの治療方法を選択するためにも使用されます。例えば、卵子を育てるために使用される排卵誘発剤は、卵巣年齢が高い場合にうまく働かないこともあるため、 排卵誘発剤の投与量を減らした「低刺激法」、または排卵誘発剤を投与しない「完全自然法」と呼ばれる治療方法を取ることがあります。

繰り返しになりますが、AMHの値は「妊娠率」には関係していないため、もし卵巣年齢が高いとしても妊娠できないわけではありません。もしAMHの値が低く卵巣年齢が高いと測定されたとしても、かかりつけの医師と相談して適切な治療を行っていただければと思います。

(3)今すぐには妊活や不妊治療を考えていない場合

まだ結婚していなかったり、結婚はしているけど妊活や不妊治療のことはまだ考えていないという方もいるでしょう。また、自分のキャリアプランを考えるための材料として卵巣年齢を測ってみたという方もいるのではないでしょうか。

卵巣年齢が高い場合は「早期閉経(早期卵巣不全)」のリスクがあり、妊娠のために残された期間が短い可能性があるということを踏まえてライフプランニングをする必要があります。

もし、既に結婚を考えているパートナーがいたり、すでに結婚していて将来的に妊活をする予定なのであれば、一緒に今後のライフプランについて話し合うことが大切です。卵巣年齢が高いということは数年先には子供を望めなくなる可能性もあるからです。 夫婦共働きの世帯がこれだけ増えている世の中ですから、子供をいつ産むかというプランは、夫婦二人のキャリアプランにも影響します。

また、まだ特定の相手はいないけれど将来的に結婚して出産したいと考えている方も、卵巣年齢を参考にご自身のキャリアプランを含めたライフプランについて考えていただければと思います。

・早期閉経(早期卵巣不全)について

ここで、卵巣年齢が高い場合に懸念される「早期閉経(早期卵巣不全)」について補足説明をしておきます。卵巣年齢が高いともうすぐ閉経してしまうのではないかと不安になる方も少なくありません。

早期閉経(早発卵巣不全)とは、卵巣内の残存卵胞が急激に減少し、その結果40歳までに閉経状態になることを指します。発生率は30才以下の女性の0.1%、40才以下の女性の1%と言われています。(*)

(*)参照元:Coulam CB, Adamson SC, Annegers JF(1986)Incidence of premature ovarian failure. Obstet Gynecol 67, 604606.

早期閉経(早発卵巣不全)の国際的な診断基準はまだ策定されていませんが、一般的には無月経症例において卵胞刺激ホルモン(FSH)が40mIU/mL以上を示し、また超音波で卵胞自体がほとんど認められない場合に早発卵巣不全と診断されます。 ですので「AMHの値が0に近い」からといって、早発卵巣不全とは診断できないのです。

しかし、AMHの値はこの早期閉経(早発卵巣不全)の前段階を捉えることができるのではないかと言われています。AMHの値が低いと必ずしもすべての人が早い段階で閉経を迎えるわけではありませんが、「 AMHが低い=自分が想像しているよりは早くに閉経を迎えるかもしれない」と心の準備は必要なのではないかと思います。

*参照:データーから考える不妊症・不育症治療 P235「検査と診断方法」

・卵巣年齢が低い人も注意が必要


さて、ここまでは「卵巣年齢が高い場合」について解説しましたが、次は卵巣年齢が低い場合について解説します。

卵巣年齢が低い場合は「若くてよかった......」とホッと安心する方が多いかもしれません。 しかし、実は卵巣年齢が低すぎる(AMHが高すぎる)場合は多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん、PCOSとも呼ばれます)という卵胞が発育するのに時間がかかり、なかなか排卵しない疾患の疑いがあります。 特に多嚢胞性卵巣症候群である場合は生理不順を伴うことが多いため、卵巣年齢が低い(AMHの値が高い)、かつ生理不順がある場合には要注意です。

(※)F checkでは、「卵巣年齢が30歳以下、AMHが5.0ng/ml以上の場合、PCOSのリスクが疑われるレベルで卵巣年齢が低いとされる」という定義にしています。

多嚢胞性卵巣症候群はうまく排卵が行われないため不妊の原因にもなりますので、もし生理不順を伴っている場合は早めに不妊治療クリニックで検査を受けてください。

生理不順を伴っていない場合は、特に心配はないでしょう。とはいえ、年齢と共に卵子の質は低下していき妊娠率は下がります。、もし現在、35歳を過ぎているのであれば卵巣年齢が低い(AMHが高い)からといって妊娠を先延ばしにすることはお勧めできません。 特に40歳前後になると例え卵巣年齢が低くても、卵子の質が低下していっていることを考慮する必要があります。

自分の卵巣年齢を知ることは今後のライフプランを考える一助になります。測定して満足ではなく、自分自身のこれからを考えるきっかけにしていただきたいです。

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